「低迷」のケース・その5

後継者問題は、早めの対策を!
日本の中小企業経営者の6割が抱える「ある悩み」
今回ご紹介するのは、直接的に経営が傾いている企業ではありません。この印刷会社E社は、小規模ながらも、コツコツと堅実な経営を続けている会社です。ただし、日本の中小企業の6割以上が抱えているというある悩みがありました。
それは後継者がいないことです。
現社長は創業者の長男、つまり2代目です。父が作った小規模な活版印刷会社を引き継ぎ、今は従業員約20人の中小企業として、厳しい経営環境の中で、なんとか堅実な経営を続けています。
社長は現在58歳。65歳まで、最低あと7年は働くつもりですが、後継者が決まっていないため、自身の進退をどうするか具体的な見通しは立っていません。
日本の中小企業では、経営者の子供が跡を継ぐのが一般的です。しかし現在、およそ3社に2社は、E社同様、経営者に跡継ぎがいないといわれています。うまく世代交代ができずに廃業するというケースも、ちっとも珍しくありません。
この社長には32歳の長男と、30歳の長女の、2人の子供がいます。このうち長女は結婚して子供もいるため、長男に会社を任せたいと考えています。しかし、大手メーカーに勤務している長男にその気はありません。
このままでは、E社の経営がいかに堅実だろうと、社長の体力の限界とともに会社がなくなってしまう可能性があります。
ページのトップへ困難の多い「従業員の社長継承」
息子に跡を継ぐつもりがないのなら、社員の中から優秀な人を選んで次期社長に抜擢するという方法もありますが、「お金」の面で難点があります。それは、自社株を買い取れる資金的裏付けがその社員にあるかどうかや、借入金の個人保証を引き受けられるかどうかといったことです。
多額の借入金の連帯保証人となってまで社長になりたい社員がいるかどうかはあやしいところです。業績が好調なら借金も少ないでしょうが、そうなると今度は自社株を買い取る資金の裏付けが難しくなってきます。
このため現社長が連帯保証を背負ったまま、経営だけを社員に任せるというケースもありますが、この場合、社員が経営に失敗し会社が倒産してしまうと、全てを失うだけでなく、借金まで背負うという悲惨な状態になってしまいます。
そもそも、社長の重責を引き継げるほどの社員は、ベテランであることがほとんどでしょうから、うまくバトンタッチができたとしても、そう遠くないうちにまた後継者問題に直面してしまうことになります。
これらを考えると、やはり長男ら親族が継ぐのが、問題が少なくすむとはいえます。
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子が親を継ぎたがらない理由
ではなぜ社長の子供は
跡を継ぎたがらないのでしょうか。
「今の仕事が楽しいから」「今の仕事の方が安定しているから」「社長業は大変そうで自分には向いていないから」――。
色々な理由が思い浮かびそうですが、ある調査で圧倒的に多かった回答が、
「将来性や魅力がないから」
です。実はE社の長男も同じでした。
32歳の彼は、このまま今の会社にいてもいいのだろうかという漠然とした疑問を持っていました。30歳前後の人がこの手の悩みを抱くのはよくあることですが、この長男の場合、勤務する大手メーカーが海外のライバル企業に押されて経営不振に陥っているという事情がありました。そのため「このまま今の会社でいいのか」という疑問は、より具体的なものではあったのです。
しかし長男の頭には「父の跡を継ぐ」という選択肢はありません。なぜならE社の仕事に将来性や魅力を感じていないからです。
E社は印刷会社ですから、受注生産が基本です。顧客から「このようなものを刷って欲しい」という注文を受けて初めて機械を動かします。逆にいえば、得意先が注文をしてこなければ経営は傾きます。そしてインターネットの普及に加え、パソコンやプリンターの発達で、実際に注文は一時期よりも確実に減っていました。
このままでは、以前にご紹介した老舗メーカーA社のように、今は大丈夫でもいつかは倒産に追い込まれるという危険性すらあります。
ページのトップへ後継者問題の解決には、企業の価値を高めること
ではE社の社長にとって、後継者問題を解決する方法は何が考えられるでしょうか。
まずは自社に将来性や魅力を持たせることでしょう。長年培ってきた技術や信頼を活かして、多角化や販路を広げることで、業績が上向くだけでなく、経営の醍醐味がさらに濃くなるわけですから、長男が「企業経営」に関心を抱くことが期待できます。
もちろん、長男が「跡を継ぐ」と決意しても、すぐにバトンタッチができるわけではありません。一般的には、後継者育成には5年はかかると言われています。
また父と子では当然、考え方も違いますから、お互いが相手を尊重し合い、理解し合うことが必要になります。父から子へ、押し付けのような形で継承を進めると、いざ息子が社長になったときに、自分の存在を示すために、過剰な方針転換を行い、これまで築いてきたノウハウや人脈を無駄にすることになりかねません。
もちろん、E社が多角化を進めたところで長男の意志は変わらないかもしれません。その場合は、長女に継がせることを考えてみるのもひとつの手でしょうし、M&Aという形でよその企業に会社ごと買い取ってもらうという方法もあります。
ページのトップへ後継者問題はプロにご相談を
いずれにせよ、後継者について不安を抱える場合、なにがしかの手は打っておくのが経営者としての責任とはいえます。縁起でもないことですが、日々の忙しさがたたって、健康を害されることも十分考えられるわけですから、早めの対策をお考えになるのが賢明だといえるでしょう。
ただし、企業再生・V字回復という難しいことも含む問題でもあるため、プロのアドバイスを参考にするのもひとつの手段です。
大阪、神戸、尼崎、西宮など阪神間や京都、奈良、和歌山など、関西・近畿一円の中小企業経営者のみなさま、経理・財務担当者さま、スムーズな事業継承のご相談は、大阪市北区同心の未来財務にぜひお気軽にご相談ください。未来財務では初回の相談を無料で承っております。
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